戰國策 再53(皇紀弐千六百七十七年十二月二十五日 四)

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 今回も斉の孟嘗君です。

 テーマは「諫言して儲けた男」です。この君主を諌めるということはとても価値があることだったのですね。
 孟嘗君は諸国を回る途中、楚に立ち寄りました。楚王は象牙の寝台を贈ろうとしました。郢(えい:楚の都)の登徒(とうと)がそれを贈る役目をおおせつかりましたが、どうも気がすすみません。そこで、孟嘗君の食客のひとりに会いました。

「このたび象牙の寝台を贈る役目をおおせつかった郢の登徒と申すものです。なにしろこの寝台は千金もする高価なもの、毛すじほどのキズでもつけた日には、妻子を売っても償えません。届けに行かないですみようにしてくださるのなら、御礼に父のかたみの宝剣をさしあげたい」

 その食客は、快諾して、孟嘗君のところに行きました・

食「象牙の寝台をもらうつもりですか」
孟「そうだ」
食「どうか受け取らないでください」
孟「どうしてt」
食「小国から宰相になってほしいと頼みに来るのは、あなたが斉の国で貧困者を救い、立派な政治をとっているという評判だからです。小国の指導者たちが国事を相談に来るのは、あなたの義に感激し、精錬にほれこんでいるからです。それが、もし、大国の楚から象牙の寝台をもらえば、これから行く小国は、あなたを招いてもさしあげるものがありません。どうか受け取らないで下さい」
孟「わかった」

 食客は小走りに退出しました。外に出ないうちに、小門のところで孟嘗君に呼び止められました。

孟「寝台をもらうなと言ってくれたのは感謝に堪えないが、あなたの帰る姿はどうも喜び勇んでいるようにも見える。わけでもあるのか」
食「うれしくてたまらないことが三つもあります。そのうえ宝剣までもらえるのですから・・・」
孟「というと・・・?」
食「百人も食客がいるのに、誰一人諌める者がおりません。私だけが諌めました。これが一つです。諌めて聞き入れられました。これが二つです。諌めてあなたの過ちを防ぎました。これで三つです。それに寝台を届けるはずの郢の登徒が、気がすすまなかったらしいのです。来ないですむように話をつけてくれたら、父のかたみの宝剣をやると約束しました」
孟「そうか、それで、もらったのか」
食「いえ、まだです」
孟「それなら早くもらうがいい」

 孟嘗君はそう言って、入り口の掲示板にこう書きました。

「私の名を掲げ、私の過ちをただして、しかも人から賄賂をもらえる者は、速やかにきて諌めよ」

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このページは、宝徳 健が2017年12月24日 16:07に書いたブログ記事です。

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