今回も斉の孟嘗君の食客のひとり馮諼(ふうけん)の逸話を紹介します。本当にスケールが大きくユニークな人物です。今の、こっけいなほどに不埒な中国とはまったく違いますね。
テーマは「おもいがけぬみやげ」です。
孟嘗君は食客たちにこんな回状をまわしました。
―わが領地、薛(せつ)におもむき、貸し金取立てに当たる希望者をつのる。ただし、会計に堪能な人物たること―
すると馮諼(ふうけん)が回状に記名して申し出ました。孟嘗君は「はてな」と思いました。
「だれだったかな、こいつは。あ~、そうか、いつか"長剣よ、帰ろうか"を歌った男だ。やはり只者ではなかった。」
孟嘗君は馮諼を呼んで謝りました。
孟「このところ仕事に思いあぐね、国政にかまけて、先生には失礼をいたした。それをお腹立ちにもならず、薛(せつ)まで貸し金取立てに行ってくださるとのこと。まことでしょうか」
馮諼「まいりましょう」
馮諼は、みじたくを整え、車に証文を積んで出かけることになりました。
馮諼「貸し金の取立てがすんだら、何を買って帰りましょう」
孟「私の所に不足しているものが欲しい」
馮諼は薛まで車をとばし、現地の役人に命じて、負債のある者を集めさせました。一人残らず集まって証文を合わせた。馮諼は立ち上がり、「ご領主さまの命令だ」といってその場で証文を焼き捨てました。民衆からは万歳の声が起こりました。
馮諼は、都にはせもどり、朝、早々と取次ぎを請いました。孟嘗君は事の速さにびっくりしました。
孟「取立てはすみましたか。それにしても、お早いおもどりで・・・」
馮諼「はい」
孟「で、何を買って来ました?」
馮諼「この邸に不足しているものといっても、宝物が山と積まれ、厩には馬が、別棟には美人が満ち溢れています。思うに、不足しているのは恩義だけです。恩義を買って来ました」
孟「恩義とは・・・?」
馮諼「あなたさまは、薛の領主として、あのちっぽけな薛の人民をしぼりとるばかりで、一向に慈しみません。わたしはあなたの命令といつわり、取立てをやめて証文を焼き捨てました。すると、期せずして万歳の声が起こりました。恩義を買ったとはこれです」
孟「まあ、お引取り下さい」
このとき、孟嘗君は、すこぶる面白くありません。でも、この馮諼が、孟嘗君がピンチのときに大活躍するのです。お楽しみに~。
孟嘗君は食客たちにこんな回状をまわしました。
―わが領地、薛(せつ)におもむき、貸し金取立てに当たる希望者をつのる。ただし、会計に堪能な人物たること―
すると馮諼(ふうけん)が回状に記名して申し出ました。孟嘗君は「はてな」と思いました。
「だれだったかな、こいつは。あ~、そうか、いつか"長剣よ、帰ろうか"を歌った男だ。やはり只者ではなかった。」
孟嘗君は馮諼を呼んで謝りました。
孟「このところ仕事に思いあぐね、国政にかまけて、先生には失礼をいたした。それをお腹立ちにもならず、薛(せつ)まで貸し金取立てに行ってくださるとのこと。まことでしょうか」
馮諼「まいりましょう」
馮諼は、みじたくを整え、車に証文を積んで出かけることになりました。
馮諼「貸し金の取立てがすんだら、何を買って帰りましょう」
孟「私の所に不足しているものが欲しい」
馮諼は薛まで車をとばし、現地の役人に命じて、負債のある者を集めさせました。一人残らず集まって証文を合わせた。馮諼は立ち上がり、「ご領主さまの命令だ」といってその場で証文を焼き捨てました。民衆からは万歳の声が起こりました。
馮諼は、都にはせもどり、朝、早々と取次ぎを請いました。孟嘗君は事の速さにびっくりしました。
孟「取立てはすみましたか。それにしても、お早いおもどりで・・・」
馮諼「はい」
孟「で、何を買って来ました?」
馮諼「この邸に不足しているものといっても、宝物が山と積まれ、厩には馬が、別棟には美人が満ち溢れています。思うに、不足しているのは恩義だけです。恩義を買って来ました」
孟「恩義とは・・・?」
馮諼「あなたさまは、薛の領主として、あのちっぽけな薛の人民をしぼりとるばかりで、一向に慈しみません。わたしはあなたの命令といつわり、取立てをやめて証文を焼き捨てました。すると、期せずして万歳の声が起こりました。恩義を買ったとはこれです」
孟「まあ、お引取り下さい」
このとき、孟嘗君は、すこぶる面白くありません。でも、この馮諼が、孟嘗君がピンチのときに大活躍するのです。お楽しみに~。
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