かつて、甲子園に「龍園」といふ、最高においしい臺灣料理の店がありました。阪神の選手なんかもよく來てゐました。TVにも出たことがあるのでご存知の方も多いのでは?天津チャーハンは「掛布ライス」でした。餃子と手羽中が最高でした。みんな、この店で、餃子と手羽中を賈つて、甲子園球場に持っていきました。
不愛想な大將が、奥さんと、お子さん二人とやってゐました。ちまちま注文してゐると、大將の機嫌が最惡になります(笑)。氣に入られると、ひと言もしゃべらず、裏メニューをだしてくれました。
奥さんがセールス上手。
「ねえ、寳德さん。うちのピータン食べたことはある?」「いや、ないよ」「へーーーーー、ないんだ」。
と、不思議そうな顔をします。
「じゃあ、出してよ」と私。たしかに絶品です(この店で絶品以外のものはない)。
食べていると。「ねえ、寳德さん、うちの〇〇は食べたことはある?」「ないよ」「へーーーー」
この繰り返しです。「もう、いいから、大將、これだと思うものは、俺がストップするまで全部出してよ」。
本當においしかつた。でも、十五年ぐらい前に突然、店がしまりました。「おやつさん、もう年だから引退したのかな?」と思つてゐました。
すると、子どもの内一人が、場所を變へて、甲子園駅のすぐ近くで店をやっていることを知りました。その名は「琥珀」。知ったのはずいぶん前ですが、行こう行こうと思って、なかなか實現しませんでした。昨日、つひに行きました。
(笑)。あいそのなさは、親父そっくりです。最初は、口もきいてくれません。
一寸、うますぎますね。味はまつたく親父と一緒。
客が私しかいなかったこともあり、そのうち、話すようになりました。十五年前はよく來ていたこと。おかみさんには大變、お世話になったこと。大將のことも。
「ああ、なんか思い出してきました」「親父さんは元氣?」「親父は元氣ですが、お袋が亡くなりました」「えっ!!!!!!」
夫婦二人三脚だったから、親父さんは、もう氣力がなくなつたのでせう。
紹興酒のボトルも入れたから、今度、誰か行きましょう。もつとも、私は前みたいに飲めませんが。
あ~、食慾が出てきた。うれしいなあ。
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