アジブト少年の樂しいひと時が瞬く間に過ぎ、つひに、四十日目を迎へました。
ア「いよいよ今日が最後の日だね」
少「はい、どうやら無事だったやうです」
ア「よかった、よかった。ここまでくれば心配ない。何か食べたいものはあるかね?」
少「では、西瓜を一切れ」
アジブがナイフを取り西瓜の皮をむこうとした瞬間、足が滑ってしまひました。
ア「あっ!」
聲をあげましたが、もう遅い。ナイフを持ったまま少年の上に倒れてしまひました。ナイフは少年の胸を貫いてゐました。少年はこときれました。
アジブは必死に逃げて、地下室の穴を出たとき、沖合に船がみえました。老父が奴隷たちと一緒に島へ戻ってきたのです。
穴に入った一行が戻ってくるのには時間はいりませんでした。老父の憔悴しきった顔は目を覆ふばかり。奴隷たちが少年の死骸を船に乘せました。船は遠ざかります・・・・・・・。 つづく
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