百八を 五十四帖(ゴジュウシヂヤウ)へ 綴る紫女(シジョ)
百八は、ご存知煩惱の数です。源氏物語では、戀の苦惱です。紫式部(紫女)は、ひたすら五十四帖に戀ゆゑ(これでいいのかな?)の惱みを綴り續けました。五十四は、百八の半分です。
五十四帖のうち、「桐壺」から幻(まぼろし 第四十一帖)までは、光源氏が多くの女性と關はりながら、人の世の喜びと哀しみをかみしめる話です。光源氏本人の物語なので、本編といふ意味で「正篇」と呼ばれます。この「正篇」のうち光源氏四十歳以前の「藤裏葉 ふじのうらば」までをぢ一部、四十歳以降の「若菜の上 わかなのじょう」からを第二部と分けることがあります。
「幻」以後の十三帖は、光源氏の子孫である薫と匂宮(におうみや)の物語なので、「續篇」と呼ばれます。中でも「橋姫 はしひめ」から「夢の浮橋」までは、宇治を舞臺とするので、「宇治十帖」の名があります。「ウジジュウヂヤウ」。
さて、つづきです。大親友である、三位中將(かつての 頭中將(とうのちゅうじょう) 左大臣の息子、自家る源氏の正妻 故葵上の兄)が左大臣家にかけつけてきました。
酒などを酌み交はし、語り合ふうちに夜も更けてきて、光源氏は左大臣家に泊まります。
この家のひとりの女房(中納言の君 覺へなくていいです)は、光源氏と特別の仲です。みんなが寝静まったのを待って、忍び入り、しみじみと語り合ひます。
左大臣の奥方(北の方)からは
「お目にかかってなにか申し上げたいのですが、心が亂れてなりません。もうお帰りですか?幼い若君が何も知らずに眠っておりますのに」
これを云はれるとつらい。
「なまじ寝入ってゐる姿を観ると、帰って心が鈍ります。心を鬼にしておいとまいたします」
涙の見送りを受けながら光源氏は立ち去ります。
二条院(光源氏の住まい)に戻りました。 つづく
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