源氏物語の物語の中での時間の經過はなんと七十五年です。七十五年の歳が流れてゐるのです。
その間、四人の天皇が即位してゐます。
最初に源氏物語に触れたとき(讀んだとはとうてい云へない)、何、この女たらしとか、平安時代はこんなに男女關係が亂れてゐたの? とか思ひました。でも、よく考へると、西暦千年ごろなんて、歐州はまだ混亂の時期でした。
支那は、宋當たりです。水滸傳ですね。腐敗の眞っただ中です。
894年に菅原道真が遣唐使を廢止しました。我が國は、支那大陸から離れることが出來ました。我が國の歴史が證明してゐます。我が國は、支那大陸(含む朝鮮半島)から離れた時代がいつも平和です。いつも彼らが我が國を亂します。明治から今に至るまでもさうですね。
源氏物語の最大の魅力は、「老若」「男女」「貴賤」「都鄙 とひ 都と田舎」「美醜」のすべての人間が登場してゐると云ふ幅廣さにあります。平安宮廷がこのやうな豐かな人間が存在したのでせう。そのため「男と女」だけではなく、「親子」「兄弟」「友と友」「師弟」などの、ありとあらゆる人間關係を描かれてゐます。熱い血の流れと共に。
さて、つづきです。光源氏は二条院(自分の邸宅)に戻りました。
女房達は氣が氣ではありません。光源氏を寝ずに待つてゐました。みんな自分も連れていつてもらへると考へてゐます。
いつも來客でひつきりなしの二条院も今はひつそり。こんなものですね。
紫の上が住んでゐる、西の對に行くと、紫の上が物思ひにふけつて夜を明かしてしまったやうです。
光「昨夜は左大臣家に行ってきました。こんなときに外泊なんて氣を惡くしたかもしれませんが、いよいよ世間を離れるとなると氣がかりなことが多くて。せめて都にいるあいだだけでも、片時もあなたと離れずにいたいのが本心です」
紫の上には、もうひとつ深い惱みがありました。つづく
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