日にひとつずつ扉を開けていくアジブです。
ひとつあければ美しい景色が廣がります。海の美しさ、山の美しさ、一面に花々の咲き亂れる大地。
芳香の漂ふ部屋もあります。數々の美しさの寳石で眼を樂しませてくれる部屋もあれば、ありとあらゆる美食と美酒に満たされた部屋。
えっ、イスラムで酒?
と思はれる方もゐるでせう。アラブ世界で飲酒が禁じられるのは、モハメッドが現れ、コーランの戒律が厳しくなつてからのことです。ああ、こつそりは飲んでゐたさうですが。千夜一夜物語では、酒を飲んで樂しむ話は満載です。
さあ、めくるめく三十九日が過ぎました。とびらは「開けてはいけない」と云はれた四十番目しか残つてゐません。アジブはどうするでせうか?
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