総督が「何か面白いことを話したら許してやろう」と言つたところまででした。
こうなつたら、何か面白い話をして総督の機嫌をとるしかありません。
まずは、仲賈人です。
「私がエジプトのカイロで商売をしておりましたときのことです。あるとき、とてもハンサムな、立派な様子の若者と知り合いました。裕福な家の息子で、たつぷりお金を使つて儲けさせてくれるので、お返しにご馳走をふるまっていました。ところが、食事をするときになると若者は、身分のの正しい人なのにひだりてをつかって食べます(イスラムの世界では左は不淨。人前に左手を差し出すことはこの上なく失礼なこと)。そのことを尋ねてみると、なんとその若者には右手がなかつたのです。そして、若者が右手を失ふまでのいきさつが、興味深いことなのです」 つづく
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