源氏物語 97(皇紀弐千六百七十九年一月二十八日)

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 光源氏は、逢瀬が不可能に近ければ近いほど、戀心を燃え上がらせました。父である桐壺帝のお后 藤壺との愛は、タブー中のタブーです。普通の男なら最初からあきらめます。

 藤原定家も後白河院の皇女 式子内親王へのタブーに満ちた愛の傳説が傳へられてゐます。

 でも、定家のそれは、あくまでも傳説。定家にとつての永遠の戀人は、生身の女性ではなく、二百年前の王朝文化と云ふ滅びつつある美でした。しかも、その本質にたどり着くのは困難なほどに、社会基盤や言語が隔絶してゐました。この距離感が定家を燃え上がらせたのです。

 ふたりとも、超人的なロマンシストですね。今の世の中はつまらない。みんな標準化だのコンプライアンスだの。でも、私達も「今、ここ」を少しだけ抜け出して、本當の日本と云ふ心の故郷を訪ねてみたいものです。でないと、この素晴らしい日本の文明など触れることさへできません。

 さて、本文。
 明石入道は、光源氏に逢つた瞬間「これほどまでに素晴らしい方なのか」と感じ「さて、娘をどのように逢わせるか」と試行錯誤します。

 ある、春のおぼろ月の夜。光源氏が事を奏でてゐました。その素晴らしいこと素晴らしいこと。明石入道は、筝を奏でます。二人の話が一致したところで、明石入道は切り出します。

「實は娘も・・・・」

 話が近づいてきます。

「この娘をぜひとも高貴なお方に縁付かせたいと積年願ってまいりました。もしかなはなければ、海に身を投げて死ね、と申しつけてあります」

 迫力ですね~。

 光源氏は、このなかなかやる入道のプレゼンテーションに感じ入ります。まあ、これが紫式部の不での力なのでせう。うんうん、とうなづいてしまひます。

 光源氏の心は動き、明石の君に手紙を書きます。 つづく

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このページは、宝徳 健が2019年1月28日 08:02に書いたブログ記事です。

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