国民医療費42兆円のうち入院医療費は約4割。ベッドが余ると患者を入院させる動機が働きやすく、ムダな医療需要を生むとの指摘が多い。このため都道府県は6年おきに作る医療計画で、住民の年齢構成や入退院実績などから需要に即した必要数(基準ベッド数)を示している。
■「病床過剰率」は2割を突破
日経新聞は必要数に対する実際の病床数の超過割合を「病床過剰率」として算出した。18年度の実際の国内病床数は122万8千床。過剰率は21%と13年度比3ポイント上昇した。入院需要が落ち込み必要数が3%減る一方、実際の減少幅が1%にとどまったからだ。過剰病床は13年度の18万5千床から2万6千床積み上がった。過剰率が5%弱だった20年前から増え続けている。
■44都道府県で過剰、「駆け込む増床」も
自治体別では宮城、埼玉、兵庫を除く44都道府県が過剰で、うち半分で過剰分が増えた。北海道、大阪、福岡は3割以上膨らんだ。
都道府県は過剰地域の増床を制限できるが、すでに存在する病床の削減は強制できない。
千葉県はひとつ前の計画途中で、必要なベッド数を下方修正した。銚子市など北東部は過剰と判断されたが、域内の病院が駆け込みで100床増やした。この地域は約1千床も過剰だ。
都道府県別の病床過剰率を算出すると、過剰率が高いほど医療費も高かった。首位の高知は直近の入院患者の平均入院日数が21日と最長。地域の年齢構成の違いを平準化した1人あたり医療費は2位だった。過剰率2、3位の山口、北海道も医療費がかさんでいる。
■進まぬリハビリ用への転換
超高齢社会を見据えれば病床の役割を変えていく必要もある。
都道府県は25年の医療体制を示す「地域医療構想」を策定した。現在の医療計画の基礎となるものだ。医療費が高い重症者向け「急性期病床」の比率を下げ、リハビリなどを施す「回復期病床」に切り替える青写真を描く。急性期病床を医師や看護師を手厚く配置する大病院に集めれば、救急対応の効率は上がる。
だが多くの病院はベッドの役割転換に抵抗している。医療スタッフの配置が手厚い急性期病床は1日4万~5万円程度と、回復期より2割ほど入院代が高いといわれる。急性期を減らすと収入減につながるのを懸念しているのだ。
東京都23区はほぼ急性期病床で、25年の必要数を2割上回る。地域医療構想の実践を病院間で話し合う会議では「患者の8割超が区外から来る。ここだけの協議はムダ」との声が噴出した。ほかの地域も同様で、具体策が決まった医療機関数は全国の1割未満だ。
病院のエゴを排し、病床の適正化を進めるには、自治体がもっと病床再編を強く促す必要がある。参考例は奈良県だ。17年に独自の急性期基準を策定。手術や救急入院の実績が基準をクリアしているかどうかを報告させ、少ない場合はリハビリ機能の充実を求める仕組みに変えた。病床の実態を「見える化」すれば、病院間で病床の削減・再編の協議を進めやすくなる。
日本総合研究所の飛田英子主任研究員は「40年以降は高齢者の数が減り、医療需要そのものが落ち込む。この時期をにらんで医療体制を集約する必要がある」と訴える。」
よい記事です。今は、医師不足ではなく、過剰病院なのです。なので、一つの病院で働く医師が相対的に不足してしまひます。
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