源氏物語 105(皇紀弐千六百七十九年四月九日)

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 森鴎外は、大學時代によく讀みました。「舞姫」「ヰタ・サセクスアリス」「高瀬舟」「阿部一族」・・・。

 その森鴎外も源氏物語にそして四辻善成に大きな影響を受けてゐるのです。

 森鴎外の処女作は「舞姫」です。本人がモデルの小説です。

 主人公の太田豊太郎は、役所から派遣されてベルリンに留学中です。ドイツの女性 エリスと同棲して學問を怠り、罷免されました。たまたまドイツを訪れた親友のとりなしで、豊太郎は、ある日本の伯爵の通訳となります。仕事のために、妊娠中のエリスをベルリンに残してロシアへと旅立ちます。エリスとの別れの場面を森鴎外はこう書いてゐます。

「また、(エリス)が停車場にて、涙こぼしなどしたらんには、影護かるべければ」

 さあ、みなさん「影護」をどう讀みますか? そして、源氏物語との關係は?

 本文です。紫の上に、明石の君のことを打ち明けた光源氏です。

 紫の上は、明石の君のことはすでに知つてゐましたし、解任についてもうすうす感づいてゐました。それに、紫の上には光源氏の子がゐません。

 でも、紫の上は本氣では怒りませんでした。かなりすねましたが(笑)。

「浮氣は、この人の癖みたいなもの。あまり深くはこだはらず、一人で留守にしていたときの悲しさだけをチクチクと云ひませう」

 そんな夫婦の心理戰がつづいてゐるうちに、明石の姫君は五十日を迎へました。

 光源氏が、明石からきた手紙を繰り返し讀んで、フッとため息なんかをつくものですから、紫の上はこんな歌を詠みます。昔ならだれでも知つてゐる有名な歌です。新古今和歌集だつたけつかなあ?忘れましたが。

み熊野の 浦よりをちに 漕ぐ船の 我をばよそに 隔てつるかな

の歌の上の句の「浦よりをちに」だけを。そして、下の句を光源氏に覺らせます。下の句の意味は「どうせ私のことなんかどうでもいいのでせう」です。光源氏は大慌て。昔の夫婦喧嘩は、教養がありますね(笑)。

「そんなことはないよ。明石の風景を思ひ出してゐるだけのことです」

 とさりげなく明石の君からの手紙を紫の上にみせます。

「まあ、なんてきれいな字。だから好きになったのね」心中複雑~。

 こんな時なのに、光源氏は思ひます。「花散里はどうしてゐるかなあ」。なんとまあ。つづく

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このページは、宝徳 健が2019年4月 9日 02:21に書いたブログ記事です。

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