「また、(エリス)が停車場にて、涙こぼしなどしたらんには、影護かるべければ」
巨匠 森尾鴎外が代表作「舞姫」で書いた文章の一部です。「影護」の部分をどう讀むか。それが前囘の宿題でした。
「影護(うしろめた)かるべければ」です。
「うしろめたし」は、現代では、「良心に悖るところがあって心やあしい」の意味ですが、平安時代には「後のことが心配で不安である」といふ意味でした。
鴎外は、なぜ、誰も知らないやうなこんな言葉を使つたのでせう?
長い長い源氏物語のその中心をなすのは、なんと言っても桐壺。桐壺なしには、源氏物語は語れないし、出来なかったのです。桐壺が急逝した後、桐壺の忘れ形見 光源氏は、桐壺の母(光源氏の祖母)の家にいました。父である 桐壺帝は、一刻も早く光源氏を宮中に連れてくるように命じます。
祖母は、娘(桐壺)をいびり殺した惡女たちがひしめく宮中に幼子の光源氏を遣はしたら、どんないじめにあるか心配でなりません。その祖母の心情を、紫式部は「うしろめたふ」と書いてゐるのです。
森鴎外も源氏物語を追求し、そして、自作に、それを取り入れていたのです。なんとすごい!!!
さて、本文です。
花散里(はなちるさと)でしたね。
少し復習しませうか? 花散る里は、源氏物語 第十一帖です。源氏物語の中で一番短い帖です。その一番短い帖が、十四帖で、躍り出ます。紫式部は天才ですね!!!
橘の 香をなつかしみ ほととぎす 花散る里を たづねてぞとふ
源氏物語の帖の名前は、すべてその帖で讀まれてゐる、和歌からきてゐます。
桐壺帝の妃の一人の妹です。桐壺帝亡き後、光源氏は、姉妹どんぶりをします(笑)。
光源氏の住まいにゐる、女性の序列で云ふと、紫の上の次が、花散里です。その次が、明石の君。
さて、どうなるのでせうか?つづく
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