1.BCPとは何か
BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)のことです。震災・津波・テロ・火災・パンデミック等の緊急事態が起きた時にでも、企業が存続するために予め計画を作成していくことを言います(事業承継計画と勘違いされる方もいらっしゃいますが)。
BCPと防災計画を同一視する方もいらっしゃいます。根本的な考え方が違います。防災計画ももちろん大切です。しかし、防災計画だけでは、緊急事態発生時に企業を存続させることはできません。
医療に「トリアージ」という概念があります。
トリアージ 人材・資源の制約の著しい災害医療において、最善の救命効果を得るために、多数の傷病者を重症度と緊急性によって分別し、治療の優先度を決定すること。特記すべきとして、優先度決定であって、重症度・緊急度決定ではない。 |
BCPについても同様です。緊急事態発生時は、人的経営資源を含むあらゆる経営資源に制約条件が加わります。その制約条件下において、すべての業務を同様に復旧しようとすると、かえって事業復旧が遅れ、企業存続が危うくなります。BCPと防災計画の大きな違いは、①緊急事態発生期間においては企業存続のために重要業務以外は切り捨てる(重要業務のみを展開する)、②重要業務を復旧させるためのRTO(目標復旧時間)を設定し、そのRTO内に重要業務を復旧させるための経営資源を定めておく。
2.BCPの本質
世間一般に言うBCPは、前述の通りです。そのため、世間一般では、BCPとは「非常事態発生時の『計画』を作っておけばよい」というBCPに対する大いなる誤解を生んでいます。総務部や業務部がBCPを作り経営陣に報告するといったことがほとんどであることから、いざ緊急事態が発生したときに何の効果も発揮しないBCPが多いことは、東日本大震災時の石油業界の対応やタイの洪水時の日本企業の復旧の遅さから見ても明らかです。
適切な例ではないかもしれませんが、軍隊には戦時編成と平時編成の2種類があります。いつ起きるかもわからない(日本においてはほとんど起きる可能性がない)戦争に対して、軍隊はモチベーションを維持し続けます。それは、常に戦時編成がうまく行くために平時編成が組まれているからです。
企業においても、「非常事態が起きた」時のみに対応する計画ではなく、非常事態がいつ起きても良いように「平時」にどのような業務遂行をしておくかを考えることがBCPの本質です。
BCPは有事を想定した平時のプログラム
なのです。例えば、机の上が汚くて、非常時に大切なデータを探していては間に合いません。常に緊張感を持って日々の業務を遂行することが求められます。
これを実現しようとすると以下のことが必要になります。
① 常日頃から組織の意思決定プロセスが明確であること
② 常日頃から各部署リーダーのリーダーシップが発揮されていること
③ 常日頃から各部署リーダーの「PM(プロジェクトマネジメント)「脳」力」が必要であること
④ 常日頃から各部署間の接点が強化され業務の関連性がたかいれべるで発揮されていること
つまり、BCPとは、BCPを作成する過程において「意思決定プロセス」「リーダーシップ「脳」力」「PM「脳」力」「各部署間の接点」を強化していく「目的」を果たすことが重要であり、この観点が抜けているBCP作成は無用の長物となります。
BCPとは、
組織開発のプログラム
です。組織開発としてのBCPを展開すると
リーダーの成長
がとても楽しみな企業活動となります。
またBCPは作成するだけではなく、「BCM(企業継続マネジメント)」が大切です。作成されたBCPをBCMを通じて社員の成長にまでつなげていきます。繰り返しますが、BCPはまさに組織開発・人財開発のプログラムです。
では、東日本大震災でどのような事例があったのでしょうか?つづく
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