今日は、事例を紹介しましょう。誤解しないでくださいね。なんでもかんでも民事信託をやればいいとは、申し上げていません。既存の方法で対処できるのであれば、慣れたやり方でやればいいです。
民法などで対応しきれない事例やスキームを組み合わせる事例のときに、活用すれば結構です。
でも、「相続」「承継」などの従来型のスキームよりかなり幅広く活用できることは事実です。
こういう会社がありました。
X會会社のオーナー株主かつ代表取締役であるAさんは、高齢から会社経営が辛くなり、長男Bさんを後継候補者と考えています。でも、X社は業績が悪く、かつBさんはまだ経営者として未熟であり、ただちにX社の承継を任せるのは困難です。
そこで、BさんがX社の代表取締役となるまで、一定期間、誰かにX社の経営を任せたいと考えました。
でも、会社の中の人間を一時的にX社の代表取締役とすればBさんの経営承継に際し、軋轢が生じることが心配されます。
そこで承継のため、事業の信託を活用して、承継の円滑化を図ろうとAさんは決心しました。(これは、事業の一部を事業信託する場合と同じです)。
①Aさんは、X社(委託者)の経営について、第三者Y(受託者:これはY社でもよい)と信託契約を締結します。
②信託契約に基づく財産の信託及び事業に付随する債務の引き受けにより実質的な「事業信託」を設定します。
③受託者X社は、Yから受益権を取得し、信託は「限定責任信託」とします。
④受託者Yは、X社の経営にかかわる執務を執り行い、当該事業によって生じた収益から報酬を受けます。委託者が
⑤残余の収益は、委託者であり受託者であるX社に配分されます。
⑥X社は信託終了時に信託財産の返還を受け元の経営体制に戻します。信託契約は、一定期間または一定事由の発生(例えばBさんがX社の経営を継続する能力がついたとAさんが判断したときなど)により、終了すると定めておきます。
あとは、AさんからBさんへの経営承継です。
留意点
①会社・法人を委託者とする信託契約を設定する場合、信託契約に基づく信託譲渡のより事業の信託を行うための対抗要件の具備及び債務引き受けに関する手続きに加え(事業だけを信託する場合は別)、委託者が株式会社である場合、会社法上の事業譲渡の手続きをします。
②委託者が会社の場合であっても、手続きを簡素化する制度がなく、事業に含まれる財産及び債務の数・内容次第では、事業信託を行うための負担が大きくなります。そのときは、特定事業のみを切り離して信託契約を結ぶことが得策です。
メリット
なんといっても戻れるM&Aが実現することです。
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