昔、男、妹の意図をかしげ(魅力的)なりけるを三位(美緒)利て、
うら若にねよげに見ゆる若草を人の結ばむことをしぞ思ふ
と聞こえけり、返し、
(妹の)初草のなどめづらしき言の葉ぞうらなくものを思ひけるかな
(兄が美しい妹を見ているうちに、自分以外の男が彼女を結婚して共寝するのを悔しく思った)
表面だけ読めば、兄と妹の近親相関です。では、の武将でもある幽斎はどう読んだか。幽斎の言葉です。
「世間では、兄が妹に対して好色な気持ちを抱いたと解釈しているが、それは間違いである。兄は妹を不憫に思い、憐憫の情を抱いているのだ。兄である自分は、この妹を美しいと思うし、彼女を妻にするのだったら幸せにしたいと思っているが、世の中の男たちは千差万別だから、妹が必ずしも幸福な結婚ができるとは限らない。それば、兄としてかわいそうだ、と心苦しく思っているのだ。
そもそも、『伊勢物語』や源氏物語は、好色を描いているのではない。男と女を通して、理想の政治の在り方を書いているのだ。この段でも、兄が妹を大切に育むべきだという教訓が書かれている」
兄が妹を、夫が妻を、それぞれ大切にすれば、美しい男女関係が発生する。その原理を、主従関係や友人関係、師弟関係へと次々に発展させれば、必ず理想の政治状況が出現すると 武将 細川幽斎は信じました(源氏物語ものがたり 島内景二氏)
古典と言うのはすごいですね。それに対し、研究に研究を重ねてきた日本人はすごい。宗祇いらい「平和と理想」をテーマに追求してきたのです。「古今伝授」です。
第二十二帖「玉鬘 たまかずら」に入ります。