母が大好きだった叔母(洋子)は、母六十二歳が亡くなった時に「汎子(ひろこ)姉ちゃんが死ぬはずない。だから私はお葬式にはいかない」と言っていたそうです。これらの手紙は息子を洋子姉ちゃんの家に連れて泊まりに行った時に、一部もらいました。その後、全てを私の家に送ってもらって、こうしてブログに書いています。
この汎子の「汎」と言う文字は「はん」とも読みます。「ひろくゆきわたる」「ひろくて限られていない」「ひろく全体に行き渡る」という意味です。じいちゃんは名前をつける天才ですね。母は、その字の通りの人でした。誰からも愛され、誰にでも優しく、活発で。そのくせ、私が日本男児として曲がった行動をしたら、恐ろしくらいの厳しさでした。本当に病気が進行してまともに動けず、握力はゼロに近くなっていたときにも家事を休もうとしません。手伝おうとしたら「これは私の仕事。私に恥をかかせないで。あなたは男でしょう。他にやることがあるはずです」とすごい迫力で怒鳴られました。
洋子姉ちゃんの「洋」も「大きな海」「広い海」「水の広がるさま」「限りなく大きくて広いさま」という意味です。母の名前の字と意味がよくにていますよね。 身体の中に優しさしか入っていないのではと私たち姉弟妹は思っています。
母は、平成七年七月十日に亡くなりました(我が社の創業記念日にしています)。享年六十二歳の若さで。ずっと病気でした。全身リウマチで身体の関節はほとんどが人工関節でした。彼女の三大事件は、北朝鮮からの引き上げで身ぐるみ剥がれそうになりながら38度線を超えて帰国したことです。舞鶴港に着眼した時に「咸興からきた秋武は知りませんか」と軍隊に行っていた伯父(舜一)の声が聞こえました。「にいちゃんだ!!!!」と家族みんなで再会を喜びました。博多に上がっていたら会えないところでした。
次は、出光興産株式会社の日章丸事件での活躍です。これについてはまた詳しく。
3番目は私を産んだことです。変な意味ではありません。うちは、父方も母方も私が中学になるまで男の子は私一人でした。つまり私が産まれるまで男の子はいませんでした。親父は戦争に行った時、「ああ、これで寳德家の家計も途絶えるのか」と思いました。そして私が産まれ・私の息子が産まれ繋がったのです。晩年父は「このつながりがなんともいえない嬉しさだ」と言っていました。誤解しないでくださいね。当時はそうだったんです。歴史を否定する必要はありません。今では親戚関係に男は、我が家2人、伯父関係に4人、姉の子1人です。
昭和三十三年八月二十日七時三十六分に私が産まれました。産声を上げなかったそうです。母は、真っ青になったことでしょう。お産婆さんの機転で、お産婆さんが私の両足首をもって吊り下げ、往復ビンタをしました。それで、産声を上げたそうです。なので、普段は信じられないぐらい優しいのですが、私が、日本男児として情けないことをしたら、鬼の形相で叱りました。
父と母の結婚式。昭和三十一年一月八日 当時はこれが精一杯でした。敗戦後十一年です。
さて、今日は、なんの手紙を紹介しようかな。叔母との手紙となるとまだまだ先になるかも。祖母と祖父、そして、母の子供の頃から結婚前の資料が洋子姉ちゃんからいただいたものの中にたくさん入っています。
今、母が存命なら、九十二歳です。そして、今日紹介するのは、母の中学校卒業の際のみんなの寄せ書きと母の成績です。彼女は、中学校で一番の成績だったのです。この寄せ書きは昭和二十四年(19
49年)三月です。今が2025年ですから、七十六年前の寄せ書きが遺っているです。素晴らしいですね。これを私がこのブログに引き継いて遺します。残すんではなく、遺します。この寄せ書きは母の呼びかけでみんながノートに書いています。しかし、昔の方はみんな達筆です。そして、心深いし、みなさん、素敵な女性です。かつての日本というのは男尊女卑と馬鹿にされている方がたくさんいますが、そんな男尊女卑の女性がこんなに心豊かになれるでしょうか。令和年代よりよほど素晴らしい女性がたくさんいます。きっとお箸や鉛筆の持ち方なんか変な人がいなかったんでしょうね。今の女優さんなんかどんなに綺麗でもお箸や鉛筆の持ち方が酷いとがっかりする人がたくさんいます。
失業式ですね。今で言うと金時計。
寄せ書きをくれた人の名前と住所。
さっきの名前と住所にある、吉永利枝さん。彼女は山鹿が住所になっています。芦屋町は芦屋地区と山鹿地区に分かれています。山鹿の方が悪そうが多かったかな笑笑。
ご覧の通り、遠賀川という川を芦屋と若松が分けている感じです。山鹿も狭いですが川向こうにあります。三池炭鉱で掘り出した石炭を遠賀川で輸送して海まで運ぶ街でした。川筋ものが多いので荒くれ者がたくさんいました。
電車を芦屋も通そうとしたのですが、住民たちが反対し今は、すっかりさびれています。
やはり民主主義は誤った判断を時にしますね。
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