TCSの話はまた、機会があったらしますね。でも、親父さんは一度やると決めたら徹底的にやる人です。ある日ちーちゃん(経理担当の女性)が出勤したら、目が真っ赤っかの親父さんがいたそうです。「親父さん、どうしたの!?」とちーちゃんが聞くとなんでも神奈川県の厚木まで厚木の運送業者にセールスに行っていたそうです。それも軽四トラックで。今と違って高速道路網がありまし、下道は、舗装もされていません。すべて舗装がされていない下道です。すごい時間がかかったことでしょう。またそんなことはしょっちゅうだったのだそうです。
今の働き方改革=働かない改革は、きっと自分の仕事なのに他人の仕事とか会社の仕事とか第三者みたいな冷めた目で仕事をみているのでしょうね。学生時代に欧州人は働くことが悪で、自分の余暇を切り売りして労働の対価を得ているという話を聞いた時はびっくりしました。
もともと我が国に「労働」権利」「義務」と云った言葉はありませんでした。大日本帝国憲法には、「権利・義務・主権」と云った言葉は一切ありません。これは明治の男たちの欧米に対する挑戦でした。「欧米の皆さん、私たちは、権利や義務などという言葉がなくても立派に国を創り・運営することができるのですよ」という。
私は出光興産株式会社に勤めている19年間は残業手当などもらったことがありません。他の社員もそうでした。だいたい、残業手当をもらうと、目の前にある仕事が「自分の手から離れて会社の仕事」になってしまいます。そんなの絶対に嫌でした。出光で新ガソリンが発売される時私は新ガソリン導入の本社のチーフをしていました。「出光の新しいガソリンは俺が市場に導入する。これに失敗したら腹を切る」と思っていました。会社の仕事とか他人の仕事とか思っていたらそんな風には思えないし、そんな楽しみは味わえないですよね。働き方改革は他人に言われてやることではなく、自分で見つけ出すことです。働き方改革は、官僚が作った「愚民化政策」です。
宇佐美の親父さんもそうだったでしょう。厚木の往復の時、楽しくてワクワクドキドキしたでしょう。
あっ、そうだ。私が本社勤務から名古屋支店勤務になった時のことです。
初めて宇佐美本社を訪ねて次の日に「宇佐美鉱油」という東海地方の宇佐美の会議があることを知りました。あとで分かったことなのですが、親父さんの所信表明演説の会みたいなものです。実績検討とかは一切ありません。
それはそれでいいのすが親父さんに「明日の会議は何時から始まるのですか?」と聞いたら、「う〜ん、八時ぐらいからかなあ」。専務み聞いたら「八時半ではなかったかなあ」。部長に聞いたら◯◯時とみんなはじまる時間が違うのです。いい加減な会社だなあと思って次の日に行くと八時半にはみんな揃っています。不思議な会社だなあと思いました。
会議が始まると親父さんが話していても寝ている所長もいます。すると親父さんは上手いんですよね笑。寝ている人間の隣に座っている人間を指名して質問に答えさせるのです。すると、隣で寝ている所長がビクッとして起きます。親父さんは所長さん達が可愛いので、どうでもいいことでは怒らないのです。いえ、怒れないのです。
毎年「全国所長会」「全国主任会」が当時の宇佐美本社があった津島市の確か労働会館で行われます。人数が多いので、そこしか入れないのです。当時で、総勢300人ぐらいいましたから。集まった日に元売のお偉さんの挨拶や親父さんの話があります。そして会の運営の話があります。びっくりしたのは、所長さんや主任さんが主役で、各地の専務や本社の人間はみんな補助席に座っているのです。「これいいなあ」と思いました。
また、テーマが発表され、所長(主任)達が班分けされ、その日寝る部屋が決まります。各地域で別々になります。そして、その日のうちに模造紙に発表内容を書いておいて、次の日にそれぞれの班が発表します。でも、夜になるとみんな飲みまくって普段の仕事を話しまくって、どの班も次の日の準備をしている様子がありません。
親父さん曰く「これでいいんだ。各地域の人間がお互い知り合い話し合い情報を得て明日からの活力にすればいいんだ」。
だれ〜も怒らないどころか、幹部達も一緒になって騒いでいます。
次の日の発表は、いつの間に作ったか知りませんが発表に耐えうるレベルではできています。
ある班が発表しているとき、最前列で楽しそうに聞いている親父さんが隣にいる専務に何か話しています。どんな話なんだろう。きっとこういう内容の方がいいとかどうかかなあ、と思って、近づいて親父さんと専務の話に聞き耳を立てました。すると「あの模造紙をなあ貼るのは、ガムテープではなくてマグネットの方がいいなあ」「ですよね」とうい会話です。
誰も否定しない(否定できない会議ではない)会議っていいですね。
さきほどの会議が始まる時間といい、この所長会・主任会といい、最初は私も「なんていいかげんな会社なんだ」と思いましたが。違うんですよね。
いいかげんって「良い加減」なです。つねに良い加減の会社はいいですね。出光もかつてそういう会社でした。もう一つ、このいいかげんな会社が、日本の石油製品販売業の中で、一番生産性が高い会社でした。宇佐美はスタンドが300箇所の時は3千億円の売り上げ。400ヶ所の時は4千億円の売り上げ。社員数はそれぞれ、三千人、と四千人です。スタンドが増えても生産性は低下するどころか、年間1億円/人売り上げるのです。こんなの他のスタンドではあり得ません。
いいかげん=良い加減の素晴らしさ
いいですね。働き方改革=働かない改革なんかでは絶対に実現しない働きがい改革の会社における事実です。
コメントする